クリスマス 心静かに、この季節ならではの喜びの響きを
2024年12月22日 演奏会「バロック音楽で祝う山のクリスマス」に向けて
イエズス・キリストの御降誕は人類の救いの実現というだけでなく、神のひとり子である幼子がもたらす光、喜び、ほのぼのとした暖かさにあふれています。音楽の授業でも取り上げられるヴィヴァルディやバッハといった作曲家たちが活躍したバロック時代にも、クリスマスのための美しい音楽がたくさん作られました。それは商店街のBGMとして流すためのものではなく、教会のミサや礼拝といった、祈りの場で演奏されたものです。本日のプログラムは心静かに、この季節ならではの喜びの響きを味わっていただけるように、バロックのさまざまな名曲を集めました。
教会の祈り歌としては単旋律のグレゴリオ聖歌が1000年以上の間、現代に至るまで歌い継がれています。まずは、夕べの祈りである晩課の聖歌と聖母マリアの歌「マニフィカト」が女子修道院のような女声聖歌隊による無伴奏で、間にフランスのクリスマス・キャロルである「ノエル」を使ったオルガン変奏曲を挿入しながら歌われます。
聖母のための祈りといえばアヴェ・マリアが有名ですが、実は最も代表的なのは「サルヴェ・レジーナ」という歌です。イタリア・バロック音楽草創期の大作曲家モンテヴェルディによる「めでたし
元后(サルヴェ・レジーナ)」"Salve regina"は本日はバス歌手の独唱でお聴きいただきます。イタリアらしい情熱的で、マリア様に恋い焦がれるかのような歌です。
17世紀オーストリアの作曲家シュメルツァーのヴァイオリン・ソナタ集"Sonatae Unarum Fidium"は、当時興隆していたイタリアのヴァイオリン音楽をドイツ語圏作曲家が出版した初めての曲集で、技巧的でとても変化に富んだ独奏曲が収められています。ヴァイオリニストの腕前をたっぷり味わうことができます。
イタリアでもう少し後の時代に活躍したコレッリの「クリスマス・コンチェルト」にあるイタリア語のタイトルをそのまま訳すと「クリスマスの夜のために作られた」"fatto per la notte di Natale"です。クリスマスの夜には、天使が羊飼いたちに現れて、ベツレヘムに神の子が生まれたことを告げ知らせます。その喜びと、羊飼いののどかで牧歌的な情景を音で描いた作品です。
バロック時代、フランスの文化は国王ルイ14世が築いた壮麗なヴェルサイユ宮殿を中心に花開きました。プログラム後半の作曲家シャルパンティエは、そんな当時主流の音楽シーンからは少し離れた、パリ市内の貴族の館や大教会で活躍していました。その作品の多くは宗教音楽で、権威的な宮殿の音楽とは一線を画していて、情感豊かで暖かく、おそらくはその人柄を現しているのではないかと思われる優しさに溢れた作品多数残しています。とても几帳面な性格だったようで、ほとんど全ての作品は細かい指示まで全て含まれた作曲家自筆による手書きの楽譜集に、丁寧に筆写されて残っています。
「主の御降誕の歌」は2部分からなり、前半では、キリストの誕生を今か今かと待ち望む世界の様子、そして後半では羊飼いがまどろむ牧場の夜の情景に始まり、天使の出現とキリスト誕生の物語が、小さな劇のように語られていきます。ぜひ歌詞対訳をご覧になって、筋を追いながらお聴きください。
合唱団、合奏団共に原村でヨーロッパの古い音楽「古楽」をたしなむ愛好家達が集まって、練習を重ねているグループです。まだまだ至らないところが多いですが、日頃の練習の成果を精一杯披露いたします。バロック音楽によってご一緒にクリスマスをお祝いする気持ちでお聴きいただけましたら幸いです。
花井 哲郎
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